野村建太 Kenta Nomura
「世界からコマが消えたなら」”If Frames Disappeared from the world”

[Time/Year/Category]
5min/2016/実験, アニメーション
映像制作がデジタル化され、世界からコマが消えた。
私は2015年12月6日から2016年8月9日までに1コマずつ焼き付けた8ミリフィルムをデジタル化して、ヴァーチャル空間に架空のフィルムの帯を作る。
作者説明文より:
映像制作環境がデジタル化して、映画における物理的なコマは消え、ヴァーチャルな存在になった。この作品は、ヴァーチャルなコマを体験するための最初の実験である。世界からは既にコマは消えているが、映像表現はどうなったのか。世界からコマが消えても、我々はアナログ時代の慣例に則って映像を理解しているのではないか。デジタル空間にヴァーチャルなフィルムの帯を作るという、一見無意味な行為によって、反語的にコマのなくなった映像制作環境を意識化することを試みた。
マクロシネコピーという8ミリフィルムを35ミリへとブローアップするための(かつて、8ミリに凝る父親がいた裕福な家庭で活躍したであろう)古いレンズを使い、8ミリフィルムの1コマひとコマをデジタル一眼レフカメラへと記録した。デジタルデータ化した一連のコマを、After Effects上で1コマずつ、縦に並べていく。縦に100コマ以上並べられた長い帯には、ヴァーチャルなカメラによって自由に近付いたり離れたりすることが出来る。今回の作品では、フィルムのコマが識別出来るぎりぎりの距離から徐々にフィルムの中へと入り込み、間欠運動によって動感を感じさせるという、最も初歩的な運動を扱った。
タイトルは、非常にメジャーな劇映画からのもじりだが、映像制作環境において物理的なコマがなくなったということは実験映像だけのニッチな問題ではなく、全ての映像表現に共通する問題であることを示唆している。また、今回制作したヴァーチャルなフィルムは、2015年12月6日から2016年8月9日までに撮影したフィルムの中から、メジャーな物語を包含しそうなコマを任意に選んで配列している。
上映歴:
映像ミュージアム公募展「MEC Award 2017(Media Explorer Challenge Award 2017)」
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[Artist]
1987年、京都府生まれ。2012年、日本大学大学院芸術学研究科映像芸術専攻修士課程修了。同大学芸術学部映画学科助手を経て、2014年から助教。8ミリフィルムのシングルフレーム撮影と、日記を書く過程を長回しするという二つの方法を用いて、「日記映画」について思考する映像作品を制作している。近作では、日記映画として日々を記録することと「アニメーション」に共通性を見出し、創作と研究を行っている。
Works
『マイマイ新子と千年の魔法』作画協力
『この世界の片隅に』特殊作画・演出補
上映歴
『ガタゴトフィルム』イメージフォーラムヤングパースペクティヴ2011
『ガタゴトフィルム2011』イメージフォーラムヤングパースペクティヴ2012
『ガタゴトフィルム交換日記』日本映像学会第39回大会
『極私的アニメーション入門』日本映像学会第40回大会
『快速急行ガタゴトフィルム』The 11th ATHENS ANIMFEST、Lisbon International Film Festival 2016 Summer edition、イメージフォーラム・フェスティバル2016、Venice Film Week 2016、Wathann Film Festival #6、Antimatter[Media Art] 2016、Broadway International Film Festival 2016、Martinique Film Festival 2016 Fall edition、The 2016 Great Lakes Shorts Film Festival
※掲載情報は公開当時のものです。