波多野哲朗 Tetsuro Hatano
「サルサとチャンプルー Cuba/Okinawa」

[Time/Year/Category]
100min/2008/ドキュメンタリー
〜身体の躍動の中に喪われた歴史が宿る〜
沖縄からキューバへ渡った移民一世から四世までを追うドキュメンタリー。本年108歳で亡くなったキューバ最後の移民一世 島津三一郎さんへの追悼の意を込めて再上映します。
(以下、公開時パンフレットより)
いまから約80年前、沖縄から遠く太平洋と米大陸を隔てて、キューバへと渡った移民とその末裔たちを追うドキュメンタリーである。
映画は100歳に近い日本人移民一世のインタビューにはじまり、二世、三世、四世とその生活ぶりを順次描いていく。そこでは知られざるかれらの受難の歴史が語られ、大戦中に日本人が収容された監獄跡(パノプティコン)の恐るべき情景なども映し出される。
しかしこの映画は、移民を描いた従来の多くのフィクションやノンフィクションのように、他国の中に日本人の痕跡を発掘したり、日本人の血統を辿るのではなく、むしろその痕跡や血統がどのように他国の風土と混じり合い、溶解しているかについて描いていく。
この映画が描く中心人物たちは、まさにそうしたディアスポラであり、無国籍的な人物たちである。それがキューバと沖縄という二つの舞台が選ばれた理由でもあった。スペインとアフリカとアメリカの文化が見事に入り混じるキューバ、一方、中国・日本・南方諸国の文化が入り混じる琉球に、さらに戦後のアメリカ文化が入り混じる沖縄。それらはいずれも強力な他者によって強いられた悲惨な歴史の証しである。
しかしこの映画は、その悲惨さの中から立ち上がるエネルギーに着目する。生活の中からつぎつぎと立ち上がるキューバの音楽はいまやアメリカやヨーロッパの人々をも魅了し、ウチナーンチュの歌と踊りがヤマトーンチュを惹きつけるのである。
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[Artist]
東京造形大学名誉教授/映像研究家/映像作家
1936年福井県生まれ。1961年大阪外国語大学ロシア語学科卒業。東京造形大学教授、日本大学芸術学部教授などを歴任。1980年、ヒマラヤ・カラコルムのチョゴリサ(7 ,600m)登山における人命救助で、アメリカ山岳協会よりデヴィッド・ソ ウル賞受賞。1998年には、世界初となるオートバイによるユーラシア大陸横断17 ,000kmに成功。近年は現代芸術と映像芸術との関係をテーマに研究を続けている。
日本映像学会会員 (元会長 )、日本映画学会名誉顧問、日本アニメーション学会名誉会員。
監督作品:『火と水の間で』(1995)、『サルサとチャンプルー Cuba /Okinawa』(2008)
主な編著:『映画監督になるには』(ペりかん社、1992)、『映像の教科書』(東京造形大学、2001)
主な共編著:『現代日本映画論大系 全6巻』(冬樹社、1970~72)、『新映画事典』(美術出版社、1980)、『映画理論集成』(フィルムアート社、1982)
主な訳書:『アンダーグラウンド映画』(三一書房、1969)、『パゾリーニとの対話』(晶文社、1972)、『西部劇 夢の伝説』(フィルムアート社、1977)
※掲載情報は公開当時のものです。