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作品レビュー「I must be somewhere about.」執筆:西崎啓介

  • 2015年8月30日
  • 読了時間: 2分

更新日:2025年11月7日

natsuko kashiwada

あと20分みていたい

執筆者:西崎啓介


 拙作「アイソレーションのアウトライン」を作っているとき、信号機をアニメーションさせるのが大好きだった。アニメーションと言っても信号機なので、三色の丸を一定時間点灯させたり、点滅させたりするだけの簡単なことでしかないが、たったそれだけのことで、観ている人の中で、画面の地場が(道路交通法的に)変化するのが面白かったし、自分の手で描いた無愛想な風景に、なにか呼吸のようなものを感じることができたからだ。


 柏田奈津子が描く絵は、寝ているようで起きている。回を重ねるごとに静止へと近づいていく画面に比例して、その画面から漏れ伝わる「呼吸音」はどんどんと深く、大きくなってきているように思える。


 なかでも「I must be somewhere about」は、景色が漏らす濃密な吐息をつよく感じる作品だ。現実ではあんなに節操無く原色をまき散らす郊外のドラッグストアも、彼女の手にかかると雑木林がごとく草いきれを吐き出し、夏の夕立のようにこちらの郷愁をかき立てる、だが、それと同時に、それでいて何人も寄せ付けないような冷たさも、そこにはある。あの魅力的な夜の交差点も、年の瀬にさしかかったショッピングモールも、朝露のような湿り気を帯びながら、同時に真空のような鋭さを併せ持つ。目を閉じてなお警戒を解かない猫のように、すぐそこにあるはずなのに、決して触れられない。柏田は「懐かしさ」のなかに観客がまどろんでしまうことを許さない。


 彼女の風景が眠りに落ちることはあるんだろうか。町田洋の「夜とコンクリート」(漫画です)のように、彼女の絵をみて「建物が寝てる」と思う日が来るだろうか。来ても来なくても良いんだけど、できればまた、この風景をみせてほしいと思う。



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