作品レビュー「散漫」執筆:奥野邦利
- tokyoeizobrig
- 2015年11月6日
- 読了時間: 1分
更新日:11月7日

鑑賞作品:「散漫」川越良昭
執筆者:奥野邦利
作者は言う「この作品と向き合うことは、ぼんやりと車窓からの景色を眺めるような感覚」と。
日常にあれば車窓からの眺めに我々の意識は追いつけない。意識は置き去りにされ、流れに抵抗すれば混沌がやってくる。混沌を避けようとすれば、遠くに見えるランドマークに眼差しを委ねるか、列車を降りて自分の足で歩くしかない。
広告映像のエディターである作者にとっては、遠くに見えるランドマークにフォーカスを合わせながら、高速列車の乗客を目的の場所まで連れて行くのは容易いのだろう。これまでの作品はそういうものだったと記憶している。
けれども今回は違う。ランドマークにフォーカスしない。混沌を恐れていない。作者は企む、混沌からの新たな脱出方法を。
過ぎ行く車窓の光景を過去に向かって無限に伸ばしていく。次の光景も同じように過去に向かって伸ばしていく、またその次も、、。目の前の光景全ては、過去に向かって多重露光しているのだ。
過去は光となって乗客を惑わす。思い出した!宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のようだ。


