作品レビュー「bit trip no.1」執筆:中条沙織里
- 2015年9月20日
- 読了時間: 2分
更新日:2025年11月7日

再生の道
執筆者:中条沙織里
この作品はロードムービーである。一つの脆く弱い個体が新たな身体を手にするロードムービーであり儀式の映像である。
この映像にはウサギのキャラクターが登場する。正確にはウサギであるかも分からないが、耳の動いているチャーミングなウサギに見える。ウサギ達は各々無秩序にさまよっている。その身体は細い。今すぐにでも折れるか溶けて中途半端にまた固まるかし兼ねないほどに無力であり、空間の意のままに伸縮され歪んだ動きを繰り返している。しかし、彼らが歩みを止めぎこちなく踊りだした時、我々はレースのように繊細な白い細胞に包まれ、幾重にも重なったその中を突き進んで行く。そうしてラストのウサギの身体の透明な静けさを目にした時、くぐり抜けたベールは、ウサギが新たに手にした、新たな身体の細胞であったのだと気付かされるのだ。我々はさまよう事を止めたウサギ達に自己を投射する事で、この映像を媒介にして、己の中に宿る神性を見つめる事が出来るのではないだろうか。
何も無い空間で歩き続けるウサギ達は脆くて弱い我々の身体なのである。そしてラストショットの両手を広げたウサギは我々が手にした新たな身体でもある。こうして観客である私たちの魂は、私たちが作り出した新たな身体へ再生した事で旅を終える。しかし、その身体は元のそれよりも無機質かつ未完成にも感じるのである。No.01と銘付けられているのはそのためなのだろうか。私がこの映像をロードムービーと感じた理由はここにある。急に切り離された様な途上感とこれから起こりうる近未来への予感と期待。この新たな身体を完成させ上手にリズムに乗れるか否かは各々に委ねられているのかもしれない。


